NIRVANA『You Know You're Right』から考える

村上哲也の講演の代表作『生態系論』
NIRVANAの遺作『You Know You're Right』は、
やり場のない苦悩、悲しみが爆発しいる、
悲しく壮絶なNIRVANAの最高傑作でしょう。


悲しく壮絶ということで、
三島由紀夫の遺作『豊饒の海』を思い出す人もいるでしょう。


NIRVANAの遺作も、三島由紀夫の遺作も、
悲しく壮絶なものです。


NIRVANAの遺作『You Know You're Right』も、
三島由紀夫の遺作『豊饒の海』も
最後がFADE AWAYしていく構成、
という共通点があります。


これと云って奇巧のない、閑雅な、明るくひらいた御庭である。
数珠を繰るような蝉の声がここを領している。
この庭には何もない。記憶もなければ何もない所へ、自分は来てしまったと本多は思った。
庭は夏の日ざかりの日を浴びてしんとしている。……
三島由紀夫豊饒の海第四巻『天人五衰


死という経験も、このようにFADE AWAYするものなのかもしれません。


悲しみ、苦悩を芸術で表現した場合の最高傑作はやはり
『You Know You're Right』かもしれません。


ラルクアンシエルの悲しみ、苦悩を芸術化した作品としては、
『I'M SO HAPPY』が挙げられます。

たった今君たちに見える俺は
とても苦しそうに見えるかもしれない
それでもどうか殺さないでくれ
本当に目を閉じてしまうまで
ラルクアンシエル『I'M SO HAPPY』


ラルクアンシエルのヴォーカルであり、
VAMPSというユニットのヴォーカルも務める
HYDEの歌声はたまにNIRVANAのヴォーカルである
カートコベインに似ています。


HYDEがカートコベインよりも、
優れた作品を発表することを、
2010年代に期待しています。


三島由紀夫の傑作の一つ『金閣寺』も、
孤独で悲しい主人公の苦悩を描いた作品です。


悲しみ、苦痛をこのように美しく表現してもらえると、
われわれもそれに共感し、共鳴し、
癒しやカタルシスが生まれます。


お笑いの世界ではそれを「あるあるネタ」といいます。
誰もが経験している人間の悲しみ、苦悩、苦痛を表現すると、
共感を感じ、笑いやカタルシスが生まれます。


あるあるネタ」の最高傑作として、
やはり1990年代から2000年代最高のお笑い芸術家である
松本人志の『ゲッタマン』(VISUALBUM、2003年)を
挙げたいと思います。


『ゲッタマン』の主人公は若手青年俳優です。
現場で、上司である現場監督などから、
理不尽な命令を言い渡されます。


主人公の若手俳優だけが正しい意見を言うのですが、
生意気だ、ということで上司などから理不尽に殴られます。


理不尽に上司や教師から殴られる、
という主題は有名な「あるあるネタ」として、
お笑い作品で多用されます。


われわれは、そのような現実の悲しみ、苦悩を描いた
お笑い作品に共感を覚え、笑い、
救われた気分になります。


今回取り上げたNIRVANAの『You Know You're Right』も、
ラルクの『I'M SO HAPPY』も、
三島由紀夫の『金閣寺』も、
松本人志の『ゲッタマン』も、
人間の悲しみ、苦悩を芸術作品として表現しているという点で、
どこか似ているのかもしれません。


私も、人間の普遍的な感情を投影した作品というものを
発表し、苦しんでいる人(自分を含む)を救いたい、
そう思うのでした。


私の評論が、そして私が紹介する作品が、
多くの人の処方箋、精神安定剤になるよう、
私は表現活動を続けます。


NIRVANA三島由紀夫も最後自殺していますが、
やはりかなりの苦悩があったのだろうと、
推測できます。


自殺寸前な人を救う表現こそ
最高の芸術なのかもしれません。


NIRVANA『You Know You're Right』

ラルクアンシエル『I'M SO HAPPY』