ここ1年で気になったテレビでのお笑い作品3選

■1位 ガキの使い理不尽シリーズ『かるた』(ガキの使い、2009年)、松本人志

2009年にガキの使いで放送された松本人志がテレビで作り上げたコント作品の最高傑作。芸人4組の楽しいかるた大会。楽しいはずのかるたで、ダウンタウン演じる大御所芸人が、後輩芸人を理不尽に怒鳴りつけ、殴る蹴るのやりたい放題。大御所には誰も逆らえないので、番組スタッフさえも、ダウンタウンの間違っている利己的な提案を受け入れる。日本の縦社会を激しく風刺した作品。日本という国は上下関係が厳しく、上の者の命令は絶対である。年齢が下の者は、上の理不尽な命令や暴力も黙って受け入れざるを得ない。実力主義よりも、年功序列が日本社会だ。そんな日本社会の現実を痛快に嘲弄した作品。年齢が上の人から理不尽に怒られたり、暴力を受けたりするのは日本では日常茶飯事である。若者はただ大人から道具として、サンドバッグとして利用されるだけだ。天才はそんな現実に嫌気が差し自殺する。松本人志『ゲッタマン』(VISUALBUM、2003年)や北野武『キッズリターン』(1996年)でも、日本の大人の陰湿さが暴力的に描かれている。日本人はその気候と同じで、陰湿でじめじめしている。


■2位 『ブサイクブロック』(侍チュート、2010年)、徳井義実

ベンザブロックのCMのパロディ。
「あなたのブスはどこから?」
「私は口元から」
「それなら黄色のブサイクブロック」
(中略)
「あなたのブスに狙いを決めてブサイクブロック」

松本人志作品は絵が汚いことが多いが、徳井義実作品は蛍光色、パステルカラーを多用して、絵がポップである。松本人志は極貧で汚い工場の街で育ったので汚い風景に親しみを感じ、徳井義実はファミレス、高層ビル、ショッピングモール、コンビニなどが当たり前にある現代で育ったため、カラフルでポップな絵が好きなのだろう。筆者は年齢的に徳井に近いので、彼の蛍光色を多用したポップな映像作品にシンパシーを感じる。カラフルで蛍光色を多用したポップな作風のクリエーターと徳井義実が組めば、凄い作品ができる予感が見える。


■3位 『服屋クエスト』(侍チュート、2010年)、徳井義実


服屋の店員とは、他人の家に土足で上がりこむように話しかけてきて不快なものである。そんな服屋のあるあるを、ドラクエのように描いた作品。服屋の店員がドラクエのモンスターのように描かれ、われわれ客がプレーヤーである。ドラクエの選択肢のようにプレーヤーは、不快な店員に対する対応を考えるが、モンスターの攻撃に屈し、欲しくもない服を何着も買わされる。「あるある」をメタファーによって表現する手法は徳井義実の十八番であり、『チリンチリン』(M-1、2006年)など、多くの作品がこの手法で制作されている。


【総評】
立川談志が長年主張しているように、テレビの9割9分はくだらないゴミである。
しかし、たまには大きな魚が釣れることもある。
今回取り上げた三匹の魚は、30年後も残る巨大魚である。魚拓を取るべきだ。





村上哲也の講演の代表作『生態系論』